「カビや微生物が悪いわけではない。人間の方が間違っているということです。それどころか、私たちの健康な生活はカビや微生物の存在と活動に支えられているといえます。」
『カビの常識 人間の非常識』(井上真由美著 平凡社新書刊)
「人は60兆の細胞からできている」、よく耳にする言葉です。でも単純に数の多さだけを言うのなら「人は菌によって生きている」、こう言った方が正確です。私たちの身体に住む菌たちの合計は100兆〜150兆匹、総重量は1キロ〜1、5キロにも達します。
“そんなに菌がいるなんて汚い!”、そう思われるかもしれません。でも例えば皮膚。あなたの皮膚にも約1兆匹もの菌たちが所狭しとひしめいています。「エ〜そんな!お風呂で毎日洗っているのに・・・」、そう嘆いてみても事実は事実。皮膚1センチあたりに平均3000匹、場所によっては30万匹もの菌が活動しています。彼らがひしめくそのおかげで、外から好ましくない菌がきても、繁殖に必要なスペースを確保できません。
また細菌やウイルスなどの侵入を酸を出すことで防いでくれてもいます。皮膚に限らず、口腔、胃、小腸、大腸と、身体のいたるところに菌たちが生息し、たんぱく質を分解したり、身体に必要な栄養分を作ったり、侵入してきた菌を攻撃したりとさまざまな活動をしています。菌たちと私たちの健康とは切っても切れない関係にあるのです。
殺菌・抗菌は文化の証?
こうしたありがたい菌たちを、私たちは目の敵にしています。それはバイ菌という言葉に集約され、合成洗剤、シャンプー、抗生物質、傷の消毒薬、エアコンの除菌、抗菌下着、スプレーによる殺菌、・・・、数え上げればキリがありません。いまや抗菌加工されていない商品を探し出すのは極めて困難な状況にあるのです。
菌を殺す方法は主に3つ。
体外の菌に対しては消毒薬、体内の菌に対しては抗生物質。また生活用品などは素材に金属イオンを混ぜ、殺菌することが一般的です。百歩譲って、これらが人体に有害な菌だけを殺してくれるなら良いのかもしれません。でも抗菌成分が悪い菌だけを攻撃することなど、有り得ないのです。有害菌であろうと有用菌であろうと、同時に攻撃し弱めてしまいます。
またもうひとつの大きな問題は、どんなに強力な抗生物質を用いたところで、すべての菌を死滅させることはできません。たとえ僅かであっても生き残る菌がいるからです。それらを「薬剤耐性菌」と呼びます。
菌からの逆襲
耐性を獲得した菌に、もはやその薬剤は効かなくなります。強力な薬剤にも順応し生き抜こうとするようとする素晴らしい適応能力といえるかもしれません。耐性を獲得した菌たちは、そこからものすごいスピードで増殖していきます。菌の増殖スピードは速く20〜30分で2倍に、この計算ですと12時間後には690億匹にも達します。最後の砦といわれていた抗生物質、「バンコマイシン」にも、すでに耐性菌が確認されているのです。
鳥インフルエンザも事情は同じです。抗インフルエンザ薬「アマンタジン」を鳥のエサに混ぜたことが直接の原因とされています。薬剤への耐性をウイルスが獲得した結果といえます。治療薬「タミフル」の発売は1996年です。それから9年、ウイルスの変異・増殖のスピードを考えればあまりに無力といわざるを得ないのではないでしょうか。
防腐剤を食べて繁殖する菌
あらゆる薬剤、添加物、農薬、薬剤などの化学物質をエサにして繁殖していく「スーパー細菌」の出現。その繁殖を止める方法は見つかっていません。現時点では蔓延するまでには至っていませんが、今後の広がりはほぼ確実と識者の間で危惧されています。
現在、国民の6割が何らかのアレルギー症状を持つといわれています。それは子供から泥んこ遊びを取り上げ、過剰衛生と抗菌グッズを与え続けた結果でもあるのです。にも関わらず抗生物質はいまだに投与され続け、抗菌グッズは氾濫し続けています。こうした状況は、症状のさらなる拡大と深刻化に向けた道筋をひた走っていると思わざるを得ないのです。
目先のメリットを過大評価し、後に起こるであろうデメリットを過小評価する。無闇やたらに殺菌を続けた結果として、薬剤耐性菌は一段と力を増しています。一方、医学はさらなる無力化を強いられています。
私たちは菌と調和する生き方を取り戻さなくてはなりません。そのためには実践のための知識と具体的な方法論を学ぶ必要があります。その先に「医者にも薬にも頼らない生き方」が見えてくるのです。
|