上の写真のように、肥料のない田んぼに虫は入ってきません。左の田んぼと右の田んぼ、実は仕切りがないのです。それにも関わらず、虫が入ってこない。
右の写真のカブトムシの幼虫。未熟な草木のある堆肥場にはたくさんいますが、一歩、離れた野原や畑には、一匹もいないのです。
このことはいったい何を意味しているのでしょうか。
自然栽培農家がいいます
虫は、本来腐ってしまうはずだった野菜や果物やお米を「あなたたちは食べてはいけないよ」と知らせてくれているんだよ……
虫や病原菌たちは、土がまだまだ汚れていることを教えてくれているといいます。
つまり、農家さんが、自然に添えていないことを教えてくれる大切なサインなのだというのです。
虫や病原菌に感謝できてこそ、本物だという自然栽培農家さんもいらっしゃるほど。
これはなかなか言えたセリフではないことは百も承知です。収入にならなければ、続けることはできないわけですから。
でも、逆に言えば、肥料・農薬を使わず、多少、天候や病気の影響があったとしても、自然栽培で生活でき継続できる道があることを意味します。
虫や病気。
その原因は、肥料であり、肥料が残る土であり、生き物の生理を無視した栽培であり、そもそもの土をはじめとする環境にあることがわかります。
私たちは、
虫や病原菌を敵視してきました。
しかし、彼らは、野菜の腐るビンでもわかるように、同じ条件でも、虫や病原菌が来るものと来ないものがあるということです。
つまり、原因は素材にあるということです。
野菜が虫に食べられるから虫を害虫と決め付けて農薬を撒く……
でも、虫が悪いわけではないわけですね。
彼らは、必要あってその場に現れているにすぎません。
野菜に原因があるとすれば、野菜がそうなる理由はなにかといえば、
野菜が育った環境、つまり土にあるわけです。
それは、土に使われた肥料であり、農薬であるというのです。
そんな虫や病原菌たちを片っ端から畑で農薬をかけて殺して、
なんとか形を維持しているのが多くの野菜の現状です。
そして農薬と肥料が土をさらに冷たく固くしてしまいます。
考えてみれば農薬を使って育てる野菜とは、農薬をかけなければ、自然淘汰されてしまう野菜です。つまりスーパーの棚に並んであなたが買うことすらできない、自然界に淘汰されるような野菜だったのです。
有機だから安心とか無農薬だから安心なのではなく、
自然に淘汰される野菜なのか、
自然の中で調和して生き抜くことのできる野菜なのかが問われるべきなのです。
有機野菜・無農薬野菜でも、農家が手で虫を取っていたり、病原菌を漢方薬や微生物資材で殺していたりすることがあります。これは、いわば対処療法で、その野菜やお米が、漢方薬や微生物資材を使わなければ、虫を手で取らなければ、自然に淘汰されるものであることに変わりないのです。
こんなことがあります。
ヨトウムシという虫がサツマイモ畑に大発生した年がありました。
どれだけ、土譲消毒してももう虫は死にません。
ヨトウムシは、夜盗虫とも書かれ、昼間は土にもぐり、夜、畑の作物を食い荒らして、他の畑から畑へと移っていきます。
一晩で畑の作物がなくなるというくらい勢いのいい、一般的には大の憎むべき害虫です。
ところが、自然栽培農家の畑にはヨトウムシがほとんど入ってきません。
周りでは、大発生しているにも関わらずです。
もちろん自然栽培も土ができてくるまでは、虫や病気が出ることはあります。
しかし、こうしたことが土のできてきた自然栽培農家で多々見られるのです。
他にも、わかりやすい例があります。
子供が好きなカブトムシ。著者である私も子供のころよく採りにいきました!カブトムシの幼虫が好む場所があったことを、ご記憶の方は多いと思います。そう、カブトムシは未分解の草木が朽ちた土層を好みます。そして、そうした草木を食べて分解してくれているわけです。
そんなカブトムシが、私たちの取り組む自然栽培の畑の堆肥置き場にいます。でも、となりの1メートルも離れていない畑の肥料も農薬も使わない場所には、一匹たりともいないのです。隣接している野原にもまったくいません。どうしてなのでしょうか。もうお分かりいただけることと思います。それは、畑や野原が、彼らの生きていける環境ではないからです。
害虫と呼ばれる虫たちも同じなのですね。
適地適作、適材適所などというように
それぞれの生き物には、それぞれの場所がある。
そして農業において言うならば、改めて、
肥料の多い環境が、虫や病気を呼び、農薬をなくてはならないものにしてしまっているのです。私たちが本当に無農薬を望むのであれば、肥料を手放す選択ができるよう農家さんを説得し、農家さんが肥料に頼らない農業に切り替えていけるよう支援していく必要があるのです。
なぜならすべては母なる土から始まるのですから
本来の食を取り戻す!
人によい食を取り戻すには、人がよい選択をする必要があります。
自然栽培を広める意味は、本来のいのちある淘汰されない食べ物を取り戻し、いのちの尊厳を私たちの生活の内側に取り戻すことにつながると感じています。
いままでの常識とは全く逆の肥料・農薬に頼らない自然栽培。
農家が自然に今まで以上に向き合わないとできない農業だ。
だからこそ、本当に野菜が育ってきたとき、言葉にならない感動がある。
それは、自分が自然に少しは添えたことを知れる瞬間だからだ。
大自然に生かされているという実感がそこにはある。
有機農業の本来の理念はすばらしいものです。それはまさに自然栽培と同じく、自然の力を引き出すことにあります。
肥料に頼らず本当に農業ができるなら、こんなにいいことはないと多くの農家さんがいいます。でも、やはりできるはずがないと、ほとんどの農家さんがおっしゃいます。
しかし、ごまかしなく、できる道があることを、多くの農家の方々に知っていただきたいと、日々活動を続けています。
なぜなら農業は人の食を預かる尊い仕事だと思うからです。